源氏(げんじ)(きみ)がお亡くなりになったあと、あの光り輝くようなお美しさを()()がれた方はいらっしゃったのかしら。
血筋(ちすじ)を引いた若い方たちを拝見しても、残念ながら源氏の君にそっくりという方は見つからないの。
上皇(じょうこう)様は(うり)(ふた)つであられるけれど、源氏の君のお子であるのは秘密中の秘密。
大きな声であれこれ申し上げることはできないわ。

その他にお美しいと評判(ひょうばん)の若者といえば、(みかど)(さん)(みや)様と、尼宮(あまみや)様がお生みになった源氏の君の若君(わかぎみ)かしら。
このおふたりは同じ六条(ろくじょう)(いん)で兄弟のようにお育ちになった。
三の宮様は十五歳、若君は十四歳。
世間はたいそうもてはやしているし、たしかにふつうのお美しさではないけれど、私に言わせれば光り輝くほどではいらっしゃらない。

源氏の君のお孫とお子ということで、世間の評価が少し甘くなっているのよね。
お若いころの源氏の君以上だと言う人さえいるのだもの。
もちろんおふたりがご立派で優雅な若者でいらっしゃるからこそではあるけれど。

明石(あかし)中宮(ちゅうぐう)様がお生みになった皇子(みこ)様たちのなかで、(いち)の宮様は東宮(とうぐう)におなりになっている。
帝から(あと)()ぎとして重々しいお(あつか)いを受けておられるわ。

亡き(むらさき)(うえ)が特別におかわいがりになった三の宮様は、二条(にじょう)(いん)相続(そうぞく)してご自宅になさっている。
ただ、帝も中宮様も、実はこの三の宮様が一番愛しくていらっしゃるみたい。
内裏(だいり)に住まわせたいとお思いだけれど、三の宮様は気楽な二条の院をお気に召している。
元服(げんぷく)なさると兵部卿(ひょうぶきょう)というお役職にお()きになった。