野いちご源氏物語 四〇 幻(まぼろし)

夏の御殿(ごてん)花散里(はなちるさと)(きみ)から(ころも)()えのお着物が届いた。
「さっぱりとした夏のお着物をお召しになれば、今日くらいは悲しいお心も落ち着かれるでしょうか」
というお手紙に、
(せみ)()(がら)のような薄い着物を着ると、(はかな)いこの世がますます悲しくなります」
源氏(げんじ)(きみ)はお返事なさった。