「多分だけれど、一回死んでるからヤケになっているのかも」

「ヤケ?」

「一回死んだから、静かにいるのも勿体無いねぇ的な?」

珀人は見上げていた顔を勢いよく下げて、私と目を合わせる。

そして、突然私の手をぎゅっと握った……というか、握ろうとした。

しかし、スカッと珀人の手は私の手を通り過ぎていく。やっぱり珀人は人ならざるものらしい。

しかし珀人はそんなことを気にもせず、私の手の場所にもう一度自分の手を重ねた。

「俺じゃ不満か?」

幽霊に迫られるという稀有(けう)な経験。

珀人と出会ってからまだ一時間も経っていないはずなのに無視したり無下(むげ)に扱ったり出来ないのは、私の好きな人と同じ顔だからだろうか。

性格がどこか違っていても、付き合った後の丹野くんはこんな感じかもしれないとイメージがつく。

それくらい珀人はやっぱり丹野くんだった。