何も答えてくれない。
 
声を殺して泣き続ける珀人に私はどうすれば良いか分からない。

「ねぇ、珀人。何が苦しいのか教えて、絶対に力になるから。私は絶対に珀人から離れないから」

珀人の力になりたい、それは紛れもない本心だった。

だから珀人も頼ってくれると思っていた。

思い込んでいた。

「伶菜、じゃあ一つだけ頼みがある」

「なに?」

「絶対に俺の力になろうなんて思うな」

突然の突き放された言葉に、私は泣きそうになる。

珀人が泣いているから、余計に泣いてしまいそうで。

「なんで珀人の力になりたいって思ったら駄目なの。私じゃ頼りないってこと?」

否定して欲しかった。それだけを願っていたのに。

「そうだよ」

短くそう答えた珀人に私は絶望して、珀人を置いて教室を飛び出した。
 
高校から離れたくて、靴を履き替えて校舎から逃げるように出ていく。

涙が止まらなくて、悔しくて堪らなかった。

珀人の力になりたかっただけなのに、珀人はそれを拒否した。

私じゃ力になれないとはっきりそう言った。

涙を拭う気すら起きなくて、ボロボロと地面に涙を落としていく。

その日はどうやって家に帰ったのか自分でも分からなかった。

気づいたら自宅に着いていた自分を見て、「馬鹿みたい」と自分を嘲笑(あざわら)った。