「珀人が生きていた時に付き合っていた私は、珀人の両親のことを知っていたの?」

「さぁ、どうだったっけ。言った気もするし、言っていない気もする」

そんな大切な話を私にしたかどうかを覚えていないなんてあるのだろうか。

それでも珀人が気にしている様子は一切なかったので、私はそれ以上は追求しなかった。

深く聞きすぎるのも良くないだろう。だから、一番伝えたいことだけを言葉にした。

「私はずっと珀人の味方だからね」

その瞬間、珀人の顔が悲しそうに(ゆが)んだ。

そのまま顔を俯けてしまう。

私は慌てて自分の机から立ち上がって珀人に近寄る。

「珀人、大丈夫!?」

しかし、珀人は顔を上げずに苦しそうに手で顔を押さえている。

ポタッ、ポタッ、と珀人の前の机に涙の跡が出来ていく。

「珀人! 急にどうしたの!」

「……何でもない」

「何でもないはずないでしょ!」

しかし、私がどれだけ問い詰めても珀人は苦しそうに涙を溢すだけだった。