「人って何があると自殺するんだろう……」

「人それぞれだろ。悩みだって違うし」

「そうだけれど……じゃあ、珀人は何か悩みはある?」

そう聞いた後に私は「しまった」と後悔した。

丹野くんの告白で聞いた話を考えると、珀人だって同じ悩みを抱えていたに決まっているのに。

そんな私の表情を珀人は読み取ったようだった。

「いいよ、気を遣わなくて。実際、俺の悩みは両親だし。特に親父。勉強を押し付けて俺の将来まで決めてくるから、めっちゃストレスだった」

珀人は私の隣の席に座ったまま、何も書かれていない黒板を真剣な目で見ている。

「だからこの状態になれて良かった所は、両親に会わずに伶菜と一緒にいられることかな。家に帰らなくても怒られないって最高。それにずっと伶菜のそばにいられるし」

いつも元気に笑っている珀人の心の奥を見た気がした。

珀人の目は黒板を映しているようで、きっと生きていた間の思い出が巡っているのだろう。