「あれ、伶菜の家じゃね?」

「見えるわけないでしょ!」

「引っ掛からなかったか」

頂上から見える太陽は沈みかけているのに、眩しいほどに辺りを赤く照らしている。

先ほどまで見ていた景色が全て赤色に染まっている。

嫌な赤色じゃなくて、ずっと見ていたいような景色だった。

それでも太陽は沈んでしまうし、観覧車もずっと乗っている訳にはいかない。

地上に着いた観覧車から降りて、私たちは遊園地を後にした。
 
日が暮れてしまった帰り道も、珀人と話していると寂しく感じない。

「でも、やっぱり一番はジェットコースターだったな」

「え、コーヒーカップでしょ」

「伶菜がジェットコースターに三回乗りたいって言ったのにコーヒーカップを選ぶなよ!」

ずっと隣を歩いている珀人の方に意識が向いていた。それは珀人も一緒だったのだと思う。

だから私たちは偶然通りかかる人物に気付けなかった。