6月25日、彼は。

そんな風が嫌いじゃなかったはずなのに、今は自分の髪を揺らすこの風が鬱陶(うっとう)しかった。

髪が目にかかることが嫌なほどに珀人と目を逸らしたくない。

「いつだって珀人は追いかけてきてくれていた。私はそのことに甘えていたから。だから今度は私が追いかけるよ。珀人がどれだけ逃げても絶対に追いかけ続けるから」

もう絶対に珀人と目を逸らさない。

「それと私の自殺の原因を見つけるまでは、丹野くんと話さない。でも、私の自殺を止められたら丹野くんと話すことを許して。もし自殺の原因を突き止められなくても、無事に1年後の6月25日を終えられたら丹野くんと話すことを許して。珀人が良いって言ってくれないと……」

すると、突然珀人が私の言葉を遮った。

「あー、待って。そこは大丈夫。俺、6月25日に消えるし。6月25日以降は伶菜に干渉出来ないから」

「はぁあああああ!?」

先ほどまでの言い争いや真剣な雰囲気を全て忘れてしまうほど、珀人の言葉に驚いてしまう。