珀人が私の元に走ってきて私を抱きしめようとした。

それでも、無情にも珀人の身体は私をすり抜けるのだ。

その瞬間の珀人の表情はどこか絶望していて、それでいて自分を嘲笑(あざわら)っているようだった。

その表情を見て、私は無意識に珀人の名を呼んでいた。

「珀人……!」

私の声で目を合わせた珀人に私はなんと声をかければ良いか分からない。

言いたいことは沢山あるはずなのに、言葉がすぐに出てこない。

「なぁ、伶菜。今の俺と教室の俺ってそんなに違う? 俺じゃあいつの代わりにならない?」

珀人は今どんな気持ちで話しているのだろう。