「会田さんって数学得意なの?」

「あー……えっと数学が得意っていうか、たまに好きな人が私に質問してくれる妄想をしながら勉強すると(はかど)るから嫌いじゃない感じ」

私の返答を聞いて、丹野くんが「ははっ!」と吹き出すように声をあげて笑った。

その姿が珀人にそっくりだった。

珀人は一度死んだからヤケになって性格が変わったと言っていたけれど、親しくなった丹野くんは案外気軽な性格なのかもしれない。

「会田さんってこんな面白い人だと思わなかった」

丹野くんが楽しそうに笑っている。

ずっと見ていることしか出来なかった丹野くんが私の目の前で笑ってくれているのだ。

気づいたら、私は丹野くんの手に触れようとしていた。