問題を解いているのは僅かな時間だったが、珀人は何も言わずに教室の扉の前でただ私たちを見ていた。

視線を感じるのに、珀人の顔を見ることは出来なかった。

問題を解き終わって丹野くんと別れ、私は教室を出た。

教室を出る時に初めて扉の前の珀人の顔を見ることが出来た。

珀人はただ苦しそうに苛立つような顔で私を見ていた。私は廊下を歩いて、人気のない場所まで行く。

そして、珀人と話そうと後ろを振り返った。

「珀人?」

いつもどれだけ嫌がっても私の後をついてくる珀人は、後ろにいなかった。

どれだけ待っても来なかった。

それが珀人の怒りを表ししているようで、泣く資格がないと分かっているのに涙が溢れそうだった。

先ほどまで気になっていた暑さすら気にならない。

もう頭の中は珀人でいっぱいだった。