その違和感に頭がおかしくなりそうだった。

七月の暑さも合わさって額に汗が滲んでいく。

珀人がどれだけ真剣に私に話しているか分かっているのに、目の前の丹野くんはそれを知らない。

ここで無視すれば、丹野くんの私への印象は最悪になるだろう。

そんな感情で、私は「丹野くん」と取った。

「ううん、まだなの」

「そうなんだ。最後の問題が難しいから俺も不安でさ。もし良かったら一緒に解かない? この後、用事が無かったらだけれど」

クレープが頭をよぎった。

それでも、問題を解くのにかかるのは長くて10分くらいだろう。

それにもう怖くて珀人の顔を見れなかった。

すぐに教室を出た後に珀人に何を言われるのか怖くて、その場しのぎだと分かっているのに時間を伸ばしたかった。

「うん、じゃあ解いて行こうかな」

そう言って、私は丹野くんの前の椅子に座った。