「ねぇ、本当に私の自殺の理由は知らないの?」

「知らねーって」

「うーん、イメージ出来ないけれど。御伽話みたいに他人事に感じる。でも、丹野くんを巻き込みたくはないな。ちなみに珀人の記憶で一番始めに私と話すのっていつなの?」

そう簡単に聞いた私は、きっとまだ先のことだと思っていたからだと思う。

しかし、珀人の返答は衝撃的だった。

「明日」

「明日!?」

「そう、でも話さないで。俺に近づかないこと。そういう話だっただろ? 一年後に伶菜の自殺に巻き込まれて、伶菜と俺は一緒に死ぬんだから近づかない方が良い」

「うぅ、確かに丹野くんを巻き込みたくないけれど……明日話すチャンスがあるのに無視するってこと?」
「そういうこと。代わりに俺と話してよーぜ」

まだ悔しそうな私に珀人は「仕方ねぇから、明日の放課後は一緒にクレープでも食いに行こーぜ」と話す。

クレープを食べることすら出来ない珀人がそう言うということは、よほど私を気遣ってくれているのだろう。

その気持ちを無下(むげ)に出来なかった。

「いちごクレープ食べてやる」

「チョコソース付きだろ?」

当たり前のようにそう返答した珀人に驚いてしまう。

分かっていたはずなのに、私と丹野くんは本当に未来で付き合っていたのだと実感する。

ベンチから立ち上がって太陽に照らされている珀人は、私の好きな人そのものだった。