御息所が苦しそうにしていらっしゃると聞いて、女房たちがご病室の方に行ってしまった。
もともと別荘に連れていらっしゃった女房は多くないから、宮様のおそばは人が少なくなる。
宮様はぼんやりとなさっている。
<静かな今なら私の気持ちをお伝えできるだろうか>
霧が建物のなかにまで入ろうとするのをご覧になって、宮様におっしゃる。
「帰る方向もわからなくなりそうです。どうしたらよいでしょう。美しい夕霧に足止めされているような気がいたします。私が帰りたくないだけかもしれないけれど」
「どうでしょうか。ご自宅が気になって帰りたいとお思いの方を足止めする力は、さすがの夕霧にもないと存じますが」
宮様のお声がほのかに聞こえて、大将様はお帰りになることなど完全に忘れてしまわれた。
もともと別荘に連れていらっしゃった女房は多くないから、宮様のおそばは人が少なくなる。
宮様はぼんやりとなさっている。
<静かな今なら私の気持ちをお伝えできるだろうか>
霧が建物のなかにまで入ろうとするのをご覧になって、宮様におっしゃる。
「帰る方向もわからなくなりそうです。どうしたらよいでしょう。美しい夕霧に足止めされているような気がいたします。私が帰りたくないだけかもしれないけれど」
「どうでしょうか。ご自宅が気になって帰りたいとお思いの方を足止めする力は、さすがの夕霧にもないと存じますが」
宮様のお声がほのかに聞こえて、大将様はお帰りになることなど完全に忘れてしまわれた。



