野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

こんなことがあって、(みや)様のご機嫌はますます悪くなってしまわれた。
大将(たいしょう)様がおろおろしておられるころ、まだご実家にいらっしゃる雲居(くもい)(かり)は、別居が長引くにつれてお(なげ)きが深まっていく。
大将様の恋人である典侍(ないしのすけ)もこの事情を耳にした。
<私にさえ嫉妬(しっと)なさった奥様なのに、今回のお相手は内親王(ないしんのう)様でいらっしゃる。ご勢力はともかくご身分では(かな)わない方だから、とても平気ではいらっしゃれないだろう>
典侍は以前から雲居の雁にお手紙を差し上げることをしていたから、お見舞いのお手紙を送った。

「夫婦の苦しみというのは、正式な妻ではない私には分かりかねます。苦しんで泣くことはできませんが、奥様のために同情の涙を流しております」
一瞬いらっとなさるけれど、
<典侍だって捨てられることを怖れているのだろう。大将様の新しいご結婚は、典侍にとってもうれしくないことのはずだ>
と思いやりなさって、返事をお書きになった。
「よその夫婦の苦しみを気の毒に思って見ていましたが、まさか自分が苦しむとは思っていませんでした」
<正直なお気持ちだろう>と典侍はご同情して読んだ。