明け方になってももう急いでお帰りにはならない。
今朝は婿君らしくのんびりなさるの。
<まだお帰りにならないのか>
宮様はお着物を引きかぶったまま、拒絶の気配をますます強く漂わせていらっしゃる。
そのご様子をちらりと見てため息をおつきになってから、お部屋のなかをぐるりを見渡してごらんになる。
物置部屋とはいえ、とくに細々とした物が置かれているわけではない。
立派な家具がいくつかあるけれど、それらを端に寄せて、宮様のおいでになる場所をついたてで囲っている。
朝日が戸の隙間から差しこんだ。
男君は宮様のお着物をそっと引きはがすと、乱れたお髪を分けてお顔をご覧になる。
上品で女らしい、美しいお顔立ちでいらっしゃった。
やっと本当のご夫婦になって安心なさった男君は、澄ましていらっしゃるときよりも優しくお美しい。
<亡き衛門の督様は大将様ほど美しい人ではなかったけれど、それでも私のことを不美人だとお思いのようだった。しかもあれからさらに衰えたのだから、とても見られたものではないとお思いだろう>
宮様は恥ずかしがっておられる。
しかしこうなってしまったからには、お気持ちを整理して冷静にお考えになる。
<入道の上皇様や亡き夫の父君がどう思われるだろう。非難されても当然だ。しかもまだ母君の喪中だというのに>
思い浮かぶのは嫌なことばかりなの。
朝のお支度に使うお道具やご朝食は、いつものお部屋の方に運ばれた。
おめでたいご結婚のはじまりだから、女房たちはいかにも喪中という着物ではなく、落ち着いた色の着物を着ている。
お部屋も喪中であることをなるべく分かりにくくして整えられている。
大和の守がうまく準備したみたい。
亡き御息所と宮様が母娘だけでお暮らしだったころは、厳しいことを言う人がいなかったから、お仕えしている人たちも怠けがちだったの。
下働きする者も少なくなっていたけれど、大和の守が指示を出して、なんとかご新婚生活が始められるようにしている。
宮様が大将様とご結婚なさったと聞いて、どこかに行ってしまっていた事務長も戻ってきた。
適当になっていたお屋敷の事務仕事も、これからはきちんと行われるようになるはずよ。
今朝は婿君らしくのんびりなさるの。
<まだお帰りにならないのか>
宮様はお着物を引きかぶったまま、拒絶の気配をますます強く漂わせていらっしゃる。
そのご様子をちらりと見てため息をおつきになってから、お部屋のなかをぐるりを見渡してごらんになる。
物置部屋とはいえ、とくに細々とした物が置かれているわけではない。
立派な家具がいくつかあるけれど、それらを端に寄せて、宮様のおいでになる場所をついたてで囲っている。
朝日が戸の隙間から差しこんだ。
男君は宮様のお着物をそっと引きはがすと、乱れたお髪を分けてお顔をご覧になる。
上品で女らしい、美しいお顔立ちでいらっしゃった。
やっと本当のご夫婦になって安心なさった男君は、澄ましていらっしゃるときよりも優しくお美しい。
<亡き衛門の督様は大将様ほど美しい人ではなかったけれど、それでも私のことを不美人だとお思いのようだった。しかもあれからさらに衰えたのだから、とても見られたものではないとお思いだろう>
宮様は恥ずかしがっておられる。
しかしこうなってしまったからには、お気持ちを整理して冷静にお考えになる。
<入道の上皇様や亡き夫の父君がどう思われるだろう。非難されても当然だ。しかもまだ母君の喪中だというのに>
思い浮かぶのは嫌なことばかりなの。
朝のお支度に使うお道具やご朝食は、いつものお部屋の方に運ばれた。
おめでたいご結婚のはじまりだから、女房たちはいかにも喪中という着物ではなく、落ち着いた色の着物を着ている。
お部屋も喪中であることをなるべく分かりにくくして整えられている。
大和の守がうまく準備したみたい。
亡き御息所と宮様が母娘だけでお暮らしだったころは、厳しいことを言う人がいなかったから、お仕えしている人たちも怠けがちだったの。
下働きする者も少なくなっていたけれど、大和の守が指示を出して、なんとかご新婚生活が始められるようにしている。
宮様が大将様とご結婚なさったと聞いて、どこかに行ってしまっていた事務長も戻ってきた。
適当になっていたお屋敷の事務仕事も、これからはきちんと行われるようになるはずよ。



