野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

このままお(あきら)めになるわけにはいかない。
<ぐずぐずしていたら、すぐに世間に()れて『実はまだ夫婦のご関係になっていないらしい』と笑われるだろう。それにここの女房(にょうぼう)たちがどう思っていることか>
男君(おとこぎみ)にとってあまりに体裁(ていさい)の悪い状態なの。

少将(しょうしょう)(きみ)をお責めになる。
「実際のところは宮様のご希望に従うが、世間には夫婦であると思わせたい。私がぱったり来なくなれば、『宮様は大将に捨てられた』という(うわさ)が立つ。それは恐れ多いではないか。そのあたりをお考えになれない幼さがおいたわしい」
少将の君は大将様にすっかり同情してしまって、物置部屋の女房用の出入り口までご案内した。

<なんということをするのだ>
宮様は愕然(がくぜん)となさる。
<女房さえも勢いの強い方になびくのだから、これから私には誰ひとり味方がいない>
母君(ははぎみ)にも女房にも守られなくなったご自身を、かえすがえす悲しくお思いになる。