野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

少将(しょうしょう)(きみ)は頼りにできそうにないけれど、大将(たいしょう)様はお(あきら)めにならない。
<この状況でお会いできないなどありえない>
ずんずん(みや)様のお部屋へ近づいていかれるので、少将の君はあわてて後を追う。
気配(けはい)をお感じになった宮様は、物置部屋に逃げて(かぎ)をかけてしまわれた。
女房(にょうぼう)たちに幼稚(ようち)だと言われてもかまわない。大将様には思いやりがなさすぎる>
と怒ってお休みになる。
<しかし、いつまでこのまま無事でいられるだろうか。大将様との再婚を(すす)める女房ばかりなのだから、鍵を開けてここへお連れしてしまうかもしれない>
女房たちまで信じられなくなってしまったことを、悲しく(くや)しくお思いになる。

男君(おとこぎみ)はつらく思われるけれど、
<いつまでもお隠れになったままではいらっしゃれないだろう>
と気を長くお持ちになっている。
分かれてお休みになって、やっと明け方になった。
一旦(いったん)離れた方がよいだろうと、外出の準備をなさる。
「その前に少しだけでも」
とおっしゃるけれど、宮様のお返事はない。
「あなたを(うら)んでいるうちに夜が明けましたが、この鍵は開けていただけないのですね。何も申し上げられないほどの冷たいご態度だ」
泣く泣く六条(ろくじょう)(いん)に向かわれる。