野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

源氏(げんじ)(きみ)大将(たいしょう)様と(おんな)()(みや)様の(うわさ)をお聞きになった。
<これまで何の問題も起こさない落ち着いた男だったのに。父親の私に似ず、一途(いちず)に妻を守っていることを(ほこ)りに思っていた。正妻(せいさい)にとっても女二の宮様にとっても心苦しいことになる。
宮様は大将(たいしょう)の正妻の兄の妻だった人なのだから、正妻の父である元太政(だいじょう)大臣(だいじん)はどうお思いになることか。そのくらいのことに気がつかない男でもないだろうに。運命からは逃れられないということなのだな。とにもかくにも私が口をはさむことではあるまい>
大将様の世間体(せけんてい)よりも、ふたりの女性のお立場を心配なさってお(なげ)きになる。

「夫を亡くした女性というのは、他の男に言い寄られて世間の噂になりやすい。あなたは大丈夫だろうか」
(むらさき)(うえ)を心配なさる。
<私が未亡人(みぼうじん)の暮らしに()えられるとお思いなのかしら。源氏の君がお亡くなりになったら、すぐにあとを追って死んでしまうでしょうに>
お顔を赤らめて恥ずかしそうになさってから、明石(あかし)女御(にょうご)様がお生みになった(おんな)(いち)の宮様のことをお考えになる。

<女の人生は窮屈(きゅうくつ)だ。世間が華やかに盛り上がっていても、(おもて)()って混ざることはできない。女だって自分の考えや好みはあるのに、ただおとなしくしていたら何も楽しくない。大切に育てた親も、娘のそんな姿を見るのは(くや)しいのではないか。自分の意見を心にしまって()もれていくのはつまらないが、そのなかでも心を(おだ)やかに(たも)っていく必要がある。私とてそんな器用なことができているかどうか>
女として生きるお心構えを、幼い女一の宮様にどのようにお教えするべきかお悩みになる。