野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

ご自宅の三条(さんじょう)(てい)にお帰りになる途中、亡き御息所(みやすんどころ)の都のお屋敷の前を通りかかられた。
ますます荒れて(へい)の一部が壊れてしまっている。
そこから敷地(しきち)の中をご覧になると、完全に()(じま)りされて人影(ひとかげ)も見えない。
月の光だけが小川の水面をきらきらと照らしている。

亡き衛門(えもん)(かみ)様が、このお屋敷で音楽会をお開きになったことなどを思い出される。
「住人のいなくなった家を秋の月が守っているのだろうか」
独り言をおっしゃって、ご自宅にお戻りになっても月を(なが)めていらっしゃる。
お心は小野(おの)へ飛んでいく。
「めずらしく浮気なんてなさって見苦しいご様子だこと」
雲居(くもい)(かり)女房(にょうぼう)たちは文句を言っている。