野いちご源氏物語 三八 夕霧(ゆうぎり)

雲居(くもい)(かり)(おんな)()(みや)様と大将(たいしょう)様のご関係がはっきりとはお分かりにならない。
<結局どうなっていらっしゃるのだろう。御息所(みやすんどころ)とは頻繁(ひんぱん)にお手紙のやり取りをなさっていたようだけれど>
悩んでいてもはっきりしないから、それとなく聞いてみようとお思いになった。
男君(おとこぎみ)が夕暮れの空をぼんやりご覧になっているところへ、小さな若君(わかぎみ)をお使者(ししゃ)にしてお手紙を届けなさる。

「どなたのためにそんなにぼんやりなさっているのですか。小野(おの)の生きておられる方が恋しいのか、亡くなった方が悲しいのか、私には分からなくて」
と、ちょっとした紙に書かれている。
<考えすぎてとんでもない想像までしておられるらしい。御息所に恋をしている可能性まで思いつかれたとは>
男君は苦笑いなさる。

「死ぬことはもちろん悲しいが、生きているということは間もなく死ぬということなのだから、どちらにしても悲しいものです。しいて言うなら命というものの(はかな)さがつらくてぼんやりしています」
すぐにお返事を書いて、さりげなくかわしてしまわれる。
<まだお隠しになるのだ>
「命が儚くてつらい」なんて()に受けることはなさらない。
浮気を認めないどころか、お相手を隠そうとなさることに女君(おんなぎみ)(なげ)かれる。