2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語

何度、シミュレーションしたか分からない。
私たちはしばらく画面を眺めたまま、言葉もなく目を合わせた。

「……B と D は、どうやっても出会う。二人とも別々の人間とぶつからない限りは──」

一ノ瀬さんが、画面から目を上げて小さく呟く。

「私たちが出会いの機会を奪ったってことですよね…全く意図したことじゃなかったけど…」

「出会えば未来線は安定する。出会わなければ未来線が大きく揺れる。俺たち、その揺れを生んだってことか?」



「責任を取って何とかしろってことでしょうか。神様みたいな存在が『出会わせなさい』って言ってるとか……」

二人とも笑うには重すぎる話を思いつくまま言い合うけど、いたって真剣だ。

「いや、待って」と一ノ瀬さん。視線が急に鋭くなる。きっと仕事中の顔はこんな顔なんだろうなと思った。

「なら、過去に戻せばいい。あのとき俺たちが交差点を渡らなければいいんだから。
なんでわざわざ五年後なんだろう?なんで未来なんだ?」

確かに、その疑問は大きい。
私はノートにペンを走らせながら整理するように言う。

「私たちが考えてきたこと、決め打ちしたことを整理しますしょう──
1)タイムリープ直前、二人とも『人にぶつかった』という共通点がある。
2)LYNX のシミュレーションでは、C と D(=あの二人)は本来出会うはずで、出会った場合は未来線が安定している。
3)実際には私たちが介在して、その出会いは成立しなかった。すると未来線が不安定になった。
4)そのタイミングで私たちは飛ばされた。」

「要するに、ぶつかったことがトリガーで、結果として未来の安定に必要な出会いを壊した。そこがタイムリープの直接的な原因になってる可能性が高い」

一ノ瀬さんは私の反応を見ながら、頷くのを待って確認したするように話す

「なんで五年後なのか、なんの力が俺たちを5年後に送ったのか、それは分からない。
何のためにって理由が分からないのが怖いところだな」

一ノ瀬さんは腕を組み、しばらく目を閉じた。部屋には画面の光だけが静かに揺れている。

「一体何者なんだ、あの2人は……」

「世界の未来を変えるほど重要な存在…」

「結月さん言ったよね、パンデミックの予測値が一日で不自然に変わったのは世界が変わったくらいあり得えないことだって」

「はい」

「変わったんだろうな、世界線ってやつが」

世界線が変わった───?

2人が誰なのか、そこが分からないと、何のために私たちが5年後に来たのか理由に辿り着けない気がする。

答えはまだ見えないけど一つだけ確かなことがあった。

2人が何者か、私には知る術がある。