野いちご源氏物語 三五 柏木(かしわぎ)

世間は誰も知らないことなので、
(とうと)内親王(ないしんのう)様がお生みになった、お年を()してからのお子とあっては、たいそうおよろこびだろう」
と想像して華やかなお祝いの準備をする。
お祝いの儀式(ぎしき)重々(おもおも)しく行われ、六条(ろくじょう)(いん)女君(おんなぎみ)たちがそれぞれ工夫してご用意をなさる。
五日目の夜には中宮(ちゅうぐう)様からお祝いが届けられた。
公式の儀式として堂々としたお祝いをなさったの。

七日目の夜には(みかど)がお祝いしてくださった。
こちらも公式の儀式よ。
それだけ姫宮(ひめみや)様は重んじられていらっしゃる。
太政(だいじょう)大臣(だいじん)様は、姫宮様の裳着(もぎ)のときに腰結(こしゆい)役をなさったご(えん)もあるから、本来は積極的に儀式のお手伝いをなさるべきだけれど、ご子息の衛門(えもん)(かみ)様のことで疲れきっていて、ひととおりのお祝いだけをなさった。

儀式には親王(しんのう)様や上級貴族がたくさんお越しになった。
表面上は、源氏(げんじ)(きみ)はこれ以上ないほどご立派に若君(わかぎみ)(あつか)われるけれど、やはり苦々しいお気持ちもあって、それほど大切にはなさらない。
儀式のあとに音楽会を開催(かいさい)する気にもおなりになれなかった。