野いちご源氏物語 三五 柏木(かしわぎ)

姫宮(ひめみや)様はちょうどその日の夕方から産気(さんけ)づかれた。
女房(にょうぼう)たちがあわてて源氏(げんじ)(きみ)にお知らせすると、驚いてお部屋へお越しになる。
<本当に私の子だったら、めずらしくてうれしかったのに。しかしそれを態度に出すわけにはいかない>
僧侶(そうりょ)に安産のお祈りをおさせになる。
一晩中お苦しみになって、夜明けごろ男のお子がお生まれになった。

<男では屋敷の奥深くに隠しておくわけにもいかない。衛門(えもん)(かみ)に似ていると気づかれてしまうのではないか。いやしかし、世話が大変な姫でなくてかえってよかったとも言える。
それにしても、わざわざ男の子が生まれたのは私が(おか)した(つみ)への(ばつ)なのだろう。入道(にゅうどう)(みや)様との間に男の子が生まれ、そちらは(みかど)皇子(みこ)として育てられた。今、衛門の督の息子が私の子として生まれ、これから私が育てていく。この世で思いがけない罰を受けるのだから、来世(らいせ)に背負っていく罪は少し軽くなるだろう>