野いちご源氏物語 三五 柏木(かしわぎ)

ご両親がご病室を(のぞ)いてごらんになると、衛門(えもん)(かみ)様がひどくぐったりなさっている。
「眠っていると聞いていたが、いったいどうしたのだ。昨日今日は少し具合がよさそうだったのに、なぜ突然これほど弱ってしまったのだ」
大騒ぎなさるので、
「何もおかしくはございません。死んでいくのですから」
と泣きながらお答えになる。