宮様はまだ慣れない尼君の髪形を気にしておられる。
源氏の君がお覗きになると、恥ずかしくてお顔をお背けになるの。
ご病気をしてますます小柄になられた。
若々しいお髪を僧侶が惜しんで少し長めに切ったから、後ろ姿はこれまでとあまりお変わりがない。
肌着は尼君らしい墨色だけれど、上着は現代風の色をお召しだから、上品でかわいらしい少女のようでいらっしゃる。
「墨色の着物は悲しいものですね。目の前が真っ暗になるような気がします。尼君におなりになっても会えなくなったわけではないのだからと心を慰めておりますが、どうしても涙はこぼれます。しかしこの世間体の悪い涙も、もとをたどれば私があなた様に見捨てられるような、ふがいない年寄りだったせいでしょう。そう考えるといろいろと胸の痛いことも悔しいこともあります。戻れるものならあなたがご出家なさる前に戻りたいけれど。
入道の上皇様があなたの新しいお住まいを考えておくとおっしゃっていました。この六条の院を出ていってしまわれたら、ついにすっかり見捨てられてしまったのだと、私は恥ずかしく悲しくなるでしょう。せめてご同情だけはなさってくださいね」
尼宮様はぼんやりとお答えになる。
「出家した人は同情の気持ちなど持ってはいけないと聞きました。それに私は生まれつきそういう気持ちがよく分かりませんから、どちらにせよあなたにご同情することはできませんでしょう」
「張り合いのないことをおっしゃる。他の男にはご同情なさったのでしょう。だからこんなことに」
そこでお止めになって、ご機嫌よく乳母に抱かれておいでの若君をご覧になる。
源氏の君がお覗きになると、恥ずかしくてお顔をお背けになるの。
ご病気をしてますます小柄になられた。
若々しいお髪を僧侶が惜しんで少し長めに切ったから、後ろ姿はこれまでとあまりお変わりがない。
肌着は尼君らしい墨色だけれど、上着は現代風の色をお召しだから、上品でかわいらしい少女のようでいらっしゃる。
「墨色の着物は悲しいものですね。目の前が真っ暗になるような気がします。尼君におなりになっても会えなくなったわけではないのだからと心を慰めておりますが、どうしても涙はこぼれます。しかしこの世間体の悪い涙も、もとをたどれば私があなた様に見捨てられるような、ふがいない年寄りだったせいでしょう。そう考えるといろいろと胸の痛いことも悔しいこともあります。戻れるものならあなたがご出家なさる前に戻りたいけれど。
入道の上皇様があなたの新しいお住まいを考えておくとおっしゃっていました。この六条の院を出ていってしまわれたら、ついにすっかり見捨てられてしまったのだと、私は恥ずかしく悲しくなるでしょう。せめてご同情だけはなさってくださいね」
尼宮様はぼんやりとお答えになる。
「出家した人は同情の気持ちなど持ってはいけないと聞きました。それに私は生まれつきそういう気持ちがよく分かりませんから、どちらにせよあなたにご同情することはできませんでしょう」
「張り合いのないことをおっしゃる。他の男にはご同情なさったのでしょう。だからこんなことに」
そこでお止めになって、ご機嫌よく乳母に抱かれておいでの若君をご覧になる。



