野いちご源氏物語 三五 柏木(かしわぎ)

源氏(げんじ)(きみ)姫宮(ひめみや)様へのお(うら)みも忘れて悲しまれる。
おそばに寄って説得しようとなさった。
「どうしてこの年寄りを見捨てて出家(しゅっけ)などなさるのだ。少しお心を落ち着かせて、まずはお薬湯(やくとう)を飲んでお食事なども召し上がりなされ。ご出家はご立派なことだけれど、お体が弱っていては修行(しゅぎょう)もおできにならないでしょう。ご体調をよくすることが先ですよ」

姫宮様は本当にお嫌そうにお(つむり)を振られる。
<これほど私の冷淡(れいたん)さを(うら)んでいらっしゃったのだろうか>
源氏の君はお気の毒にお思いになる。