「こんなところまでお入りいただくのは上皇様には失礼でございますが」
ご病床近くにお席をご用意なさると、女房たちが姫宮様を抱き起こし申し上げる。
「私が病気回復のお祈りをしてあげられたらよいけれど、まだ修行が足りなくてそのような力はありません。ただ、私に会いたがっておられると聞いてね、それで元気が出るのならと思ってやって来たのですよ」
涙をぬぐっておっしゃる。
姫宮様は弱々しくお泣きになる。
「もう生きていられるとは思えませんから、お越しくださったついでに父君のお手で出家させてくださいませ」
「ご立派なお考えだけれど、若い人が早まって出家すると、何かと問題が起きて世間から非難されることが多いのですよ。あなたの人生はまだ先が長いから」
一度お止めなさってから、源氏の君に向かっておっしゃる。
「自分からこう言っていることだし、病状もかなり悪く見えるから、私としては最後の望みを叶えてやりたいと思います。死ぬ直前の出家でもご利益はあると申します」
「この何日か宮様は同じことを仰せになりますが、私はお許しせずにおります。妖怪などが憑りついて『出家したい』と言わせ、正気に戻ったら取り返しのつかないことになっていた、ということもあると聞きますので」
「妖怪に操られて不届きなことをするというなら問題だけれど、衰弱した人が出家したいと言うのなら、認めてやるべきではありませんか。無理に止めてしまったら後悔で苦しむだろう」
入道の上皇様はご出家も仕方がないと思っていらっしゃる。
ご病床近くにお席をご用意なさると、女房たちが姫宮様を抱き起こし申し上げる。
「私が病気回復のお祈りをしてあげられたらよいけれど、まだ修行が足りなくてそのような力はありません。ただ、私に会いたがっておられると聞いてね、それで元気が出るのならと思ってやって来たのですよ」
涙をぬぐっておっしゃる。
姫宮様は弱々しくお泣きになる。
「もう生きていられるとは思えませんから、お越しくださったついでに父君のお手で出家させてくださいませ」
「ご立派なお考えだけれど、若い人が早まって出家すると、何かと問題が起きて世間から非難されることが多いのですよ。あなたの人生はまだ先が長いから」
一度お止めなさってから、源氏の君に向かっておっしゃる。
「自分からこう言っていることだし、病状もかなり悪く見えるから、私としては最後の望みを叶えてやりたいと思います。死ぬ直前の出家でもご利益はあると申します」
「この何日か宮様は同じことを仰せになりますが、私はお許しせずにおります。妖怪などが憑りついて『出家したい』と言わせ、正気に戻ったら取り返しのつかないことになっていた、ということもあると聞きますので」
「妖怪に操られて不届きなことをするというなら問題だけれど、衰弱した人が出家したいと言うのなら、認めてやるべきではありませんか。無理に止めてしまったら後悔で苦しむだろう」
入道の上皇様はご出家も仕方がないと思っていらっしゃる。



