入道の上皇様は、ご安産の報告におよろこびになった直後、ご病気におなりになったと聞いて動揺なさる。
<どのような具合なのだろう>
仏教の修行どころではなくご心配なさっている。
姫宮様もお体が弱っていくほどに父君が恋しくなって、
「もう二度とお目にかかれないのだろうか」
とお泣きになる。
上皇様は人づてにそれをお聞きになると、いけないこととは思いながらも、こっそりお寺を出て六条の院へお行きになった。
突然のご訪問だったので、源氏の君は驚いて、かしこまってお迎えなさる。
「出家した身で子どものことなど気にしてはいけないと分かっているのだが、やはり親心だけは捨てきれなくてね。修行にも集中できないし、もし子どもに先立たれなどしたら、あのとき一目会っておけばよかったといつまでも後悔するだろうから、世間に何と言われてもかまわないと思ってこちらに来ました」
僧侶になっても上品でお優しい雰囲気はそのままでいらっしゃる。
目立たないように、格式高い僧侶用のお着物ではなく、喪服のようなお着物をさりげなくお召しになっていた。
それがまたお美しくて、源氏の君はうらやましくなってしまわれる。
「ご体調がお悪いとはいえ、とくに重病というわけではいらっしゃらないのです。ただこの数か月間お元気が出ず、お食事もあまり召し上がらないことが続いたものですから、このように弱ってしまわれまして」
泣きながらご説明なさる。
<どのような具合なのだろう>
仏教の修行どころではなくご心配なさっている。
姫宮様もお体が弱っていくほどに父君が恋しくなって、
「もう二度とお目にかかれないのだろうか」
とお泣きになる。
上皇様は人づてにそれをお聞きになると、いけないこととは思いながらも、こっそりお寺を出て六条の院へお行きになった。
突然のご訪問だったので、源氏の君は驚いて、かしこまってお迎えなさる。
「出家した身で子どものことなど気にしてはいけないと分かっているのだが、やはり親心だけは捨てきれなくてね。修行にも集中できないし、もし子どもに先立たれなどしたら、あのとき一目会っておけばよかったといつまでも後悔するだろうから、世間に何と言われてもかまわないと思ってこちらに来ました」
僧侶になっても上品でお優しい雰囲気はそのままでいらっしゃる。
目立たないように、格式高い僧侶用のお着物ではなく、喪服のようなお着物をさりげなくお召しになっていた。
それがまたお美しくて、源氏の君はうらやましくなってしまわれる。
「ご体調がお悪いとはいえ、とくに重病というわけではいらっしゃらないのです。ただこの数か月間お元気が出ず、お食事もあまり召し上がらないことが続いたものですから、このように弱ってしまわれまして」
泣きながらご説明なさる。



