野いちご源氏物語 三五 柏木(かしわぎ)

小柄(こがら)な弱々しいお体で、初めての出産などという恐ろしい体験をなさったから、姫宮(ひめみや)様はお薬湯(やくとう)もお口にできないほどでいらっしゃる。
源氏(げんじ)(きみ)(そむ)いた証拠(しょうこ)が目の前に現れたことがおつらく、
<このついでに死んでしまいたい>
とお思いになる。

源氏の君は人目(ひとめ)につくところでは若君(わかぎみ)を大切になさるけれど、人目がなければちらりともご覧にならない。
年老いた女房(にょうぼう)などは、源氏の君がお帰りになったあとで文句を言う。
「ずいぶんご冷淡(れいたん)なこと。おふたりしかお子がいらっしゃらなかったところへお生まれになった若君で、しかもこんなにお美しいのに」
姫宮様はよけいに苦しくなってしまわれる。
<これからはますます私を遠ざけなさるだろう>
(うら)めしくてつらくて、<(あま)になってしまおう>と考えつかれた。