学園長室に入った私は、いつものように学園長の座るソファーの真向かいに座った。
そしてすぐに本題に入る。
「それで、今回の依頼はなんですか? さっきあわてていたのと関係あります?」
「ああ。本当についさっきのことだが、これが私のもとに届いてね」
そう言って目の前のテーブルに置かれたのは、銀色のラインで装飾された綺麗なカードだった。
「これって……」
書かれている文章を見て、思わず息を呑む。
だって、カードに書かれていたのは——
『六月七日、18時ちょうどにロードライトガーネットのネックレスを頂戴いたします。
怪盗 シルバー』
シルバー!
その名前に、昨日出会った銀髪の彼のことを思い出して心臓がドキッと跳ねた。
もし昨日の彼が本当に怪盗シルバーだったのなら、また会えるってこと?
シルバーがロードライトガーネットをターゲットにしていて、この聖花学園のネックレスも狙っているっていうウワサも本当だったんだ!?
もう会えないかもしれないって思っていた好きな人に会えるかもしれない。そんな純粋な喜びが先に来たけれど、学園長の硬い声にハッとした。
「そう、怪盗シルバーからの予告状だ」
つい頬が緩みそうになったけれど、学園としてはよくないことなんだと思い直して口元にグッと力を入れる。
自然と神妙な面持ちになった私へ、学園長は難しい顔で話し出した。
「一応警察には届け出るつもりだけれど、できればあまり大ごとにはしたくないんだ。ただのイタズラという可能性もあるし……何より怪盗シルバーといえば、盗んでもその品をすぐに返してしまうという変わった怪盗らしいじゃないか」
「そう、らしいですね」
私は佐々木部長に一度聞いたことがあるってだけで、詳しくは知らない。でも、学園長も怪盗シルバーのことを知っていて、同じく『盗品を返す変な怪盗』って認識ならきっと合っているんだと思う。
「万が一盗まれたとしても、結局戻ってくるならば初めから騒ぎにする必要もないだろう」
ふう、とため息のように息を吐いた学園長は、目元に小じわを作るような笑みを浮かべて私に告げた。
「だから日向夏音さん、今回は君に頼みたいと思っているんだ」
頼みたいって、なにを? なんて、聞くまでもない。
シルバーからネックレスを盗むという予告状が来たけれど、騒ぎを大きくしたくないということは、私にネックレスの警護を頼みたいってことだ。
普通に考えたらフラワーなんて役職についているとはいえ、一般生徒にそんな危ないかもしれないことを頼むのはおかしい。
でも、私に関してはちょっと例外なんだ。
じつは私が小さい頃から通っている空手道場の師範と学園長は大の親友で、この聖花学園に私が入学できたのはその繋がりなの。
聖花学園は有力者のお嬢様も多く在学しているから、色々ともめごとがあるんだって。
大きな事件になりそうなことなら保護者や警察の方で何とかしてもらうんだけど、小さなもめごとはそうもいかなくて困ってるっていう学園長の相談で、道場で上位の力量があってちょうど中学入学を控えている私が推薦されたってわけ。
この学園は私立だから本当は授業料も有償なんだけれど、学園長の頼みを聞くってことで無償にしてもらえてるんだ。
母子家庭であまり余計なことにお金を使いたくない私は、公立の中学より家から近いってこともあって承諾したの。
そういうわけで、今回も私に頼みたいってことらしい。
「どうだろう? もし危ない目に遭いそうだったら逃げてくれて構わないし……頼まれてくれないかい?」
授業料を無償にしてもらっているとはいえ、頼みごとを聞くのは強制じゃない。だから断ってもいいんだろうけれど……。
「わかりました。ネックレスの警護、やらせていただきます!」
少し申し訳なさそうな笑みを浮かべる学園長に、私は拳をにぎって力強くうなずく。
一年のときもストーカー被害に遭っている先輩の護衛をしたことがあったし、万が一ネックレスは盗まれても問題ないっていうなら、あのときよりも安全だろうから。
それに、やっぱりシルバーにまた会いたい。
思い出すだけでドキドキするこの感情が恋なのか、ちゃんと確かめたいからね!
そんな裏の思惑があることは隠して、私はそのまま当日の作戦について学園長と話を続けた。
そしてすぐに本題に入る。
「それで、今回の依頼はなんですか? さっきあわてていたのと関係あります?」
「ああ。本当についさっきのことだが、これが私のもとに届いてね」
そう言って目の前のテーブルに置かれたのは、銀色のラインで装飾された綺麗なカードだった。
「これって……」
書かれている文章を見て、思わず息を呑む。
だって、カードに書かれていたのは——
『六月七日、18時ちょうどにロードライトガーネットのネックレスを頂戴いたします。
怪盗 シルバー』
シルバー!
その名前に、昨日出会った銀髪の彼のことを思い出して心臓がドキッと跳ねた。
もし昨日の彼が本当に怪盗シルバーだったのなら、また会えるってこと?
シルバーがロードライトガーネットをターゲットにしていて、この聖花学園のネックレスも狙っているっていうウワサも本当だったんだ!?
もう会えないかもしれないって思っていた好きな人に会えるかもしれない。そんな純粋な喜びが先に来たけれど、学園長の硬い声にハッとした。
「そう、怪盗シルバーからの予告状だ」
つい頬が緩みそうになったけれど、学園としてはよくないことなんだと思い直して口元にグッと力を入れる。
自然と神妙な面持ちになった私へ、学園長は難しい顔で話し出した。
「一応警察には届け出るつもりだけれど、できればあまり大ごとにはしたくないんだ。ただのイタズラという可能性もあるし……何より怪盗シルバーといえば、盗んでもその品をすぐに返してしまうという変わった怪盗らしいじゃないか」
「そう、らしいですね」
私は佐々木部長に一度聞いたことがあるってだけで、詳しくは知らない。でも、学園長も怪盗シルバーのことを知っていて、同じく『盗品を返す変な怪盗』って認識ならきっと合っているんだと思う。
「万が一盗まれたとしても、結局戻ってくるならば初めから騒ぎにする必要もないだろう」
ふう、とため息のように息を吐いた学園長は、目元に小じわを作るような笑みを浮かべて私に告げた。
「だから日向夏音さん、今回は君に頼みたいと思っているんだ」
頼みたいって、なにを? なんて、聞くまでもない。
シルバーからネックレスを盗むという予告状が来たけれど、騒ぎを大きくしたくないということは、私にネックレスの警護を頼みたいってことだ。
普通に考えたらフラワーなんて役職についているとはいえ、一般生徒にそんな危ないかもしれないことを頼むのはおかしい。
でも、私に関してはちょっと例外なんだ。
じつは私が小さい頃から通っている空手道場の師範と学園長は大の親友で、この聖花学園に私が入学できたのはその繋がりなの。
聖花学園は有力者のお嬢様も多く在学しているから、色々ともめごとがあるんだって。
大きな事件になりそうなことなら保護者や警察の方で何とかしてもらうんだけど、小さなもめごとはそうもいかなくて困ってるっていう学園長の相談で、道場で上位の力量があってちょうど中学入学を控えている私が推薦されたってわけ。
この学園は私立だから本当は授業料も有償なんだけれど、学園長の頼みを聞くってことで無償にしてもらえてるんだ。
母子家庭であまり余計なことにお金を使いたくない私は、公立の中学より家から近いってこともあって承諾したの。
そういうわけで、今回も私に頼みたいってことらしい。
「どうだろう? もし危ない目に遭いそうだったら逃げてくれて構わないし……頼まれてくれないかい?」
授業料を無償にしてもらっているとはいえ、頼みごとを聞くのは強制じゃない。だから断ってもいいんだろうけれど……。
「わかりました。ネックレスの警護、やらせていただきます!」
少し申し訳なさそうな笑みを浮かべる学園長に、私は拳をにぎって力強くうなずく。
一年のときもストーカー被害に遭っている先輩の護衛をしたことがあったし、万が一ネックレスは盗まれても問題ないっていうなら、あのときよりも安全だろうから。
それに、やっぱりシルバーにまた会いたい。
思い出すだけでドキドキするこの感情が恋なのか、ちゃんと確かめたいからね!
そんな裏の思惑があることは隠して、私はそのまま当日の作戦について学園長と話を続けた。



