野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

源氏(げんじ)(きみ)衛門(えもん)(かみ)様をとても評価しておられた。
こんなことになるまでは、風流(ふうりゅう)な会をするときにはいつも良きご相談相手になさっていたの。
それがふっつりと途絶(とだ)えた。
<世間にあやしまれてしまう。しかし、情けない年寄りだと勝ちほこった顔をされたらたまらない。会えば私も冷静ではいられないだろう>
ひと月以上ご機嫌(きげん)(うかが)いにもお越しにならないままよ。

世間は納得している。
「衛門の督様はずっとご病気だから参上(さんじょう)なさらないのだろう。(むらさき)(うえ)(おんな)(さん)(みや)様もご体調がお悪くて、今年は源氏の君も風流な会を開かれる余裕などなかったのだ」
と思っている。
ただ大将(たいしょう)様だけは心当たりがおありになる。
<病気だけが理由ではないはずだ。姫宮(ひめみや)様のことでずいぶん思いつめていたから、六条(ろくじょう)(いん)に上がりづらいのだろう>
そこまではご想像なさるけれど、まさかご親友がとんでもない(あやま)ちを(おか)し、その何もかもを源氏の君が知ってしまわれた、とまではお考えにならない。