野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

源氏(げんじ)(きみ)玉葛(たまかずら)の君を思い出される。
今は右大臣(うだいじん)様のご正妻(せいさい)だけれど、もともとはご後見(こうけん)役がいなくて源氏の君を頼っていらっしゃった方よ。
姫宮(ひめみや)様と比べられるご身分ではないものの、その点では似ておられるの。

<幼くして両親と別れ、乳母(めのと)などに田舎(いなか)で育てられた人だけれど、世間を渡っていく力のある聡明(そうめい)な人だった。私が父親代わりをしながら言い寄っても、さりげなくかわしつづけたのだ。右大臣がまだ大将(たいしょう)だったころ、不届(ふとど)きな女房(にょうぼう)に手引きさせて無理やり自分のものにしたけれど、玉葛の君ははっきりと不快(ふかい)を表していた。

あれはわざとだったのだ。いつの間にかはじまった恋愛結婚などではなく、あくまで実父(じっぷ)養父(ようふ)が決めた結婚だと世間に知らせておく必要があった。そうすればうまくいかなくても女の責任にはならない。幸いあのふたりはうまくいっているから、はじまりがどちらでも同じことのように思えるが、それでも恋愛結婚だったら世間が夫婦を多少は軽く見るだろう。そこまで()()して賢く動いたのだ>