源氏の君は二条の院の人目のないところでお手紙をよくご覧になる。
どうしてもあの衛門の督様がそんなことをなさるとはお思いになれないの。
<女房の誰かがふざけて、衛門の督の筆跡をまねて書いたのかもしれない>
とまでお考えになるけれど、それにしては内容が生々しすぎる。
これまでのいきさつも、あふれる恋心もすべて書かれているの。
<熱の伝わるよい文章だが、恋文はこんなふうにはっきりと書いてはいけないのだ。他の者に見られたときのことを考えなければ。優美で上品な男なのに、相手への思いやりが足りない。私が若かったころは、いかに省略しながら思いをうまく伝えるか工夫したものだが。あれほどの男でも恋に夢中になると分別がつかなくなるらしい。
それにしても、これから先、姫宮様をどうお扱いしたらよいものか。ご懐妊というのも衛門の督の子であろう。あぁ、嫌だ。自分で証拠を見つけてしまったのに、これまでどおり大切にできるわけがない。
どうでもよい恋人でも浮気されれば腹が立つのに、宮様は私の正妻ではないか。まったく衛門の督は身の程知らずなことをしてくれたものだ。私がこれほど尊重して、最愛の紫の上よりも大切に扱っている宮様に手を出すなど。
帝のお妃様たちのなかにも、このような過ちをする方は昔からまれにおられる。帝との間にお互いご愛情がなく、仕方なく後宮にいらっしゃるような方は、他の男がやさしく口説けばなびいてしまわれることもあるだろう。いけないことだがそれならまだ理解できるのだ。しかし今回の場合は、私の愛情が衛門の督の愛情より頼りになるとは思えない。
腹が立つしがっかりもするが、態度に出してはいけないだろうな。宮様のご体面のためにも、私の体面のためにも、気づいていないふりをするしかない>
「あぁ」
そこで源氏の君ははっとなさった。
<亡き上皇様は、私と入道の宮様の関係にお気づきだったのではないか。入道の宮様が皇子をお生みになっても、知らぬ顔で通していらっしゃったのだ。私は衛門の督のことをとやかく言える立場ではない。自分だってあれほど恐ろしい過ちをしてしまったというのに>
恋に狂った男がどうなってしまうか、誰よりもよくご存じでいらっしゃる。
どうしてもあの衛門の督様がそんなことをなさるとはお思いになれないの。
<女房の誰かがふざけて、衛門の督の筆跡をまねて書いたのかもしれない>
とまでお考えになるけれど、それにしては内容が生々しすぎる。
これまでのいきさつも、あふれる恋心もすべて書かれているの。
<熱の伝わるよい文章だが、恋文はこんなふうにはっきりと書いてはいけないのだ。他の者に見られたときのことを考えなければ。優美で上品な男なのに、相手への思いやりが足りない。私が若かったころは、いかに省略しながら思いをうまく伝えるか工夫したものだが。あれほどの男でも恋に夢中になると分別がつかなくなるらしい。
それにしても、これから先、姫宮様をどうお扱いしたらよいものか。ご懐妊というのも衛門の督の子であろう。あぁ、嫌だ。自分で証拠を見つけてしまったのに、これまでどおり大切にできるわけがない。
どうでもよい恋人でも浮気されれば腹が立つのに、宮様は私の正妻ではないか。まったく衛門の督は身の程知らずなことをしてくれたものだ。私がこれほど尊重して、最愛の紫の上よりも大切に扱っている宮様に手を出すなど。
帝のお妃様たちのなかにも、このような過ちをする方は昔からまれにおられる。帝との間にお互いご愛情がなく、仕方なく後宮にいらっしゃるような方は、他の男がやさしく口説けばなびいてしまわれることもあるだろう。いけないことだがそれならまだ理解できるのだ。しかし今回の場合は、私の愛情が衛門の督の愛情より頼りになるとは思えない。
腹が立つしがっかりもするが、態度に出してはいけないだろうな。宮様のご体面のためにも、私の体面のためにも、気づいていないふりをするしかない>
「あぁ」
そこで源氏の君ははっとなさった。
<亡き上皇様は、私と入道の宮様の関係にお気づきだったのではないか。入道の宮様が皇子をお生みになっても、知らぬ顔で通していらっしゃったのだ。私は衛門の督のことをとやかく言える立場ではない。自分だってあれほど恐ろしい過ちをしてしまったというのに>
恋に狂った男がどうなってしまうか、誰よりもよくご存じでいらっしゃる。



