「姫宮様はそれほどお悪いようではありませんので、今夜は二条の院に戻ろうと思います。あちらはまだ病状が安定せず、なかなかよくなりません。見捨てられたと思わせるのも気の毒ですから。私のことを悪く言う女房がいても信じてはいけませんよ。あちらが落ち着いたら、すぐに誠意をお見せいたしましょう」
いつもならかわいらしい冗談などを言ってお話しなさるのに、今回のご訪問では目も合わせず、ひどく沈んでおられる。
源氏の君はそれをただの嫉妬としかお思いにならない。
ご機嫌をとろうとあれこれ話しかけていらっしゃるうちに日が暮れた。
知らぬ間に少しうとうとなさっていたようで、外ではさかんに蜩が鳴いている。
「道がよく見えなくなる前に出発しなければ」
と、いそいでお着替えをなさる。
「月が出てからの方が道はよく見えるのではありませんか」
少女らしい可憐な様子で姫宮様がおっしゃる。
<お引きとめなさるのか>
源氏の君は心苦しくなって立ち止まられた。
「お帰りになってしまったら、蜩と一緒に私も泣いてしまいそうです」
幼いお気持ちをそのままお伝えになったのがおかわいらしい。
「弱ったな」とつぶやいて、源氏の君はもう一度お座りになる。
<紫の上も蜩の声を聞きながら私の帰りを待っているはずだが、これだけ甘えておいでなのを振りきって帰るのもお気の毒だ>
結局、もう一晩泊まることになさる。
それでもやはりお心では紫の上のことが気になっていらっしゃる。
いつもならかわいらしい冗談などを言ってお話しなさるのに、今回のご訪問では目も合わせず、ひどく沈んでおられる。
源氏の君はそれをただの嫉妬としかお思いにならない。
ご機嫌をとろうとあれこれ話しかけていらっしゃるうちに日が暮れた。
知らぬ間に少しうとうとなさっていたようで、外ではさかんに蜩が鳴いている。
「道がよく見えなくなる前に出発しなければ」
と、いそいでお着替えをなさる。
「月が出てからの方が道はよく見えるのではありませんか」
少女らしい可憐な様子で姫宮様がおっしゃる。
<お引きとめなさるのか>
源氏の君は心苦しくなって立ち止まられた。
「お帰りになってしまったら、蜩と一緒に私も泣いてしまいそうです」
幼いお気持ちをそのままお伝えになったのがおかわいらしい。
「弱ったな」とつぶやいて、源氏の君はもう一度お座りになる。
<紫の上も蜩の声を聞きながら私の帰りを待っているはずだが、これだけ甘えておいでなのを振りきって帰るのもお気の毒だ>
結局、もう一晩泊まることになさる。
それでもやはりお心では紫の上のことが気になっていらっしゃる。



