野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

衛門(えもん)(かみ)様は源氏(げんじ)(きみ)六条(ろくじょう)(いん)にお戻りになったと聞いて、お(かど)違いな(うら)(ごと)のお手紙を小侍従(こじじゅう)()てにお送りになった。
源氏の君が離れへ行かれた(すき)に、小侍従が姫宮(ひめみや)様にお見せする。
「嫌なものを見るとよけいに苦しくなるの。ただでさえ気分が悪いのに」
うつ()してしまわれたから、お目の先にお手紙を広げてお置きする。
「お気の毒なことが書かれていますよ。ほんの少しだけでもお読みください」
そのとき他の女房(にょうぼう)気配(けはい)がして、小侍従は宮様の前についたてを置くと去っていってしまった。

お手紙は宮様のお手元にある。
<どうしたらよいかしら>
とあわてておられるところに源氏の君がお戻りになった。
とっさによい隠し場所を思いつかず、ご自分のお座りになっている敷物(しきもの)の下にはさんでおかれる。