野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

梅雨(つゆ)のころになると、すっかりご回復とまではいかないけれど、ご危篤(きとく)のころに比べれば少しはよくおなりになった。
それでも寝たきりでいらっしゃる。
お祈りはずっと続けられている。
妖怪(ようかい)はあれからときどき現れて(むらさき)(うえ)をお苦しめするの。
暑くなってくるとぐったりと弱ってしまわれたので、源氏(げんじ)(きみ)はおろおろと(なげ)かれる。

病床(びょうしょう)からうつろな目でご覧になって、はっきりしない意識でお考えになる。
<いつ死んでも心残りはないけれど、今でさえこれほど悲しんでおられるのだから、私が死んだときにはどうなってしまわれるのか>
心苦しくて、お薬湯(やくとう)などを少しはお飲みになるようになった。
それがよかったのかしら、ひと月ほどするとお(つむり)をもたげることがおできになるようになった。
源氏の君はうれしく思われたけれど、まだ油断(ゆだん)はできないと思って、六条(ろくじょう)(いん)にはお行きにならない。