紫の上がお亡くなりになったらしいと聞いて、弔問客がぞくぞくとやって来る。
お祭り見物の帰りにあちこちで噂になったみたい。
「大変なことになった。あれほど源氏の君に愛されて幸福だった女君が亡くなったから、今日は雨なのだ」
「まさに美人ほど寿命が短いということだろう。あれほどの人が長生きして世の中の楽しみを味わいつくしたら、他の者はつまらなくなってしまうからな。これからは女三の宮様がご勢力を取り戻されるだろう」
貴族たちがひそひそと話している。
衛門の督様は昨日一日があまりに長かったことに懲りて、弟君たちとお祭り見物に出かけていらっしゃった。
噂を聞いて、そのまま二条の院へ向かわれる。
まだ本当かどうか分からないので、ふつうのお見舞いのようにして参上なさった。
お屋敷のなかから女房たちの泣き声が聞こえてきて、<噂は本当だったのだ>とお胸が騒ぐ。
紫の上の父宮であられる式部卿の宮様が、げっそりしたお顔で入っていかれた。
源氏の君の家来たちが弔問客の対応をしている。
それを待っておいでになると、大将様が涙をぬぐいながら出ていらっしゃった。
衛門の督様は近くへ寄ってお話しかけになる。
「いったいどういうことでしょう。よくない噂を耳にしましたが、とても信じられず、ただお見舞いに参上したのですが」
「ずっとかなりお悪い状態で、今朝お亡くなりになったように見えたのだけれど、どうやら妖怪のしわざだったらしいのです。先ほど息を吹き返しなさったそうですが、まだ安心はできないご容態で本当につらい」
泣きはらした目をなさっている。
<この人の養母は花散里の君で、紫の上とはそれほど親しいと聞いていなかったけれど>
衛門の督様はあやしんで、ご自分の許されない恋のことがあるから、大将様のこともお疑いになるの。
たくさんの弔問客が来ているとお聞きになって、源氏の君は家来を通じておっしゃる。
「重病だった者が急に危篤状態になりましたから、女房などが混乱して騒ぎまして、私もなんだか心が落ち着かないままでおります。お見舞いいただいたお礼は、また改めてまして」
冷静になった衛門の督様は一刻も早く立ち去りたいとお思いになる。
どさくさに紛れて二条の院にお入りになったけれど、本来なら源氏の君に近づくなんて恐ろしいの。
お心にやましいことがおありですものね。
お祭り見物の帰りにあちこちで噂になったみたい。
「大変なことになった。あれほど源氏の君に愛されて幸福だった女君が亡くなったから、今日は雨なのだ」
「まさに美人ほど寿命が短いということだろう。あれほどの人が長生きして世の中の楽しみを味わいつくしたら、他の者はつまらなくなってしまうからな。これからは女三の宮様がご勢力を取り戻されるだろう」
貴族たちがひそひそと話している。
衛門の督様は昨日一日があまりに長かったことに懲りて、弟君たちとお祭り見物に出かけていらっしゃった。
噂を聞いて、そのまま二条の院へ向かわれる。
まだ本当かどうか分からないので、ふつうのお見舞いのようにして参上なさった。
お屋敷のなかから女房たちの泣き声が聞こえてきて、<噂は本当だったのだ>とお胸が騒ぐ。
紫の上の父宮であられる式部卿の宮様が、げっそりしたお顔で入っていかれた。
源氏の君の家来たちが弔問客の対応をしている。
それを待っておいでになると、大将様が涙をぬぐいながら出ていらっしゃった。
衛門の督様は近くへ寄ってお話しかけになる。
「いったいどういうことでしょう。よくない噂を耳にしましたが、とても信じられず、ただお見舞いに参上したのですが」
「ずっとかなりお悪い状態で、今朝お亡くなりになったように見えたのだけれど、どうやら妖怪のしわざだったらしいのです。先ほど息を吹き返しなさったそうですが、まだ安心はできないご容態で本当につらい」
泣きはらした目をなさっている。
<この人の養母は花散里の君で、紫の上とはそれほど親しいと聞いていなかったけれど>
衛門の督様はあやしんで、ご自分の許されない恋のことがあるから、大将様のこともお疑いになるの。
たくさんの弔問客が来ているとお聞きになって、源氏の君は家来を通じておっしゃる。
「重病だった者が急に危篤状態になりましたから、女房などが混乱して騒ぎまして、私もなんだか心が落ち着かないままでおります。お見舞いいただいたお礼は、また改めてまして」
冷静になった衛門の督様は一刻も早く立ち去りたいとお思いになる。
どさくさに紛れて二条の院にお入りになったけれど、本来なら源氏の君に近づくなんて恐ろしいの。
お心にやましいことがおありですものね。



