ご気分を変えようと、衛門(えもん)(かみ)様は内裏(だいり)弘徽殿(こきでん)女御(にょうご)様をご訪問なさった。
女御様は奥ゆかしい方だから、兄君(あにぎみ)であっても慎重(しんちょう)に対応なさって、お姿を見せることはなさらない。
<高いご身分の女性はこれがふつうなのだ。(おんな)(さん)(みや)様のお姿を拝見できた方がおかしい>
と思うけれど、恋心でぼんやりしているから、姫宮(ひめみや)様のお振舞いが軽率(けいそつ)だったのではというところまではお考えにならない。