野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)下

上皇(じょうこう)(くらい)にある方がおふたりになったから、(おんな)(さん)(みや)様の父君(ちちぎみ)の方は入道(にゅうどう)の上皇様とお呼びいたしましょうか。
入道の上皇様は、ご自分の皇子(みこ)様が新しい(みかど)におなりになったけれど、仏教(ぶっきょう)修行(しゅぎょう)に集中なさって、内裏(だいり)のことなどは聞かないようにしておられる。
ただ、春と秋には帝が上皇様のお住まいへ行幸(みゆき)なさることになっているから、そのときには捨てた世間のことを思い出される。
やはり唯一(ゆいいつ)のご心配は女三の宮様のこと。
源氏(げんじ)(きみ)がだいたいの後見(こうけん)はしてくださっているだろうが、細かいところはあなたがさりげなく()(づか)ってやってほしい」
と帝にお願いなさる。
さっそく帝は女三の宮様の内親王(ないしんのう)としての(かく)をひとつ上げて、経済面の強化(きょうか)をなさった。
ますます華やかなご威勢におなりになったわ。