源氏(げんじ)(きみ)は新上皇(じょうこう)様に皇子(みこ)がいらっしゃらなかったことを残念にお思いになる。
新上皇様は実は源氏の君のお子なの。
<秘密が世間に知られることなく、帝としてご立派にお役目を()たされた。たしかに(ひと)安心(あんしん)ではあるがお血筋(ちすじ)()えてしまった。ここまでの運命だったのだろう>
でもこんなこと、どなたにもおっしゃることができない。
お胸のうちで悲しんでいらしゃる。
新上皇様は少しはお出かけもしやすくなって、ご希望どおりでお幸せそうよ。

明石(あかし)女御(にょうご)様はすでに皇子(みこ)様を何人もお生みになっている。
(みかど)から格別に大切にされて、もっとも有力な中宮(ちゅうぐう)候補(こうほ)だけれど、皇族(こうぞく)出身の中宮が三人連続することを嫌がる人たちもいるわ。