「レシール、自分が何を言っているのか分かっているのか」

「あら、ちゃんと名前で呼んで下さるのですね。セルト様」

私のそんな返答に分かりやすくセルト様の表情がさらに険しく変わる。

「セルト様。いくら政略結婚といえど、全く妻と向き合わずに結婚生活が送れるとお思いで?」

「仮面夫婦などこの世に数えきれないほどいるだろう」

「それで上手くいくのは両方が納得している場合だけですわ。私は『全く』受け入れておりませんもの」

セルト様が険しい表情のまま、私に一歩近づいた。