冷たいはずの王子様は少女にある勝負を仕掛け、甘い溺愛を注ぐ。

それでも、私は蒼河様から目を話さなかった。

「俺の家柄上、沢山の取り繕ったやつを見てきたが、お前も同じ目をしている」

「そんなに私を疑っているなら、何故私をメイドとして雇われたのですか?」

蒼河様がまた一段と、私に顔を近づけた。






「この状況でも、俺と目を逸らさないから」






そう言った蒼河様の表情は天井のライトの逆光でよく見えない。

「蒼河様、一つ言いたいことが」

「なんだ?」

「このままではせっかく整えたお髪が乱れます。まだ髪をワックスで固めていないので、普通に座って下さい。パーティーに遅れて困るのは蒼河様でしょう」

「俺も困るが、広葉もメイドとしての責任を取らされるかもな」

「それで辞めさせられたら、また他の働き口を探さないとですね」

淡々とそう答えた私に、蒼河様が顔を歪ませたのが分かった。

逆光でも分かるほどに。