野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

夏の御殿(ごてん)での祝賀(しゅくが)(かい)当日、太政(だいじょう)大臣(だいじん)様がお越しになると、源氏(げんじ)(きみ)は驚いてお迎えになった。
まさかお越しくださるとは思っておられなかったのだけれど、太政大臣様は(みかど)のご命令を受けて参列なさったの。
美しく貫禄(かんろく)があって、重々しい方でいらっしゃる。
一方の源氏の君は、まだ若々しさが十分におありになって、青年のように見えるわ。

立派な祝賀会のあとは音楽会になって、皆様はりきって演奏なさる。
琵琶(びわ)兵部卿(ひょうぶきょう)(みや)様、源氏の君は(きん)、太政大臣様は和琴(わごん)と、それぞれにお得意な楽器を担当なさる。
太政大臣様の和琴(わごん)をひさしぶりにお聞きになった源氏の君は、ご自分も(きん)を最高の技術でお弾きになった。
青春時代も仲のよいおふたりだったけれど、今はお子同士がご結婚なさった間柄(あいだがら)だから、お酒を片手に話しこんでは、幸せそうに泣いていらっしゃる。
太政大臣様へのお礼として、源氏の君は和琴(わごん)高麗(こま)(ぶえ)などをお贈りになった。

贅沢(ぜいたく)なことはすべて辞退(じたい)なさったけれど、源氏の君は皇室(こうしつ)(えん)の深い方だから、自然と立派なお祝いがつづいた一年だったわ。