野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

年末が近づいたころには、中宮(ちゅうぐう)様が(さと)()がりして祝賀(しゅくが)(かい)をお開きになった。
ご両親を亡くして頼りない境遇(きょうぐう)にいらっしゃったところを、源氏(げんじ)(きみ)養女(ようじょ)にして入内(じゅだい)させ、しかも中宮(ちゅうぐう)(くらい)にまで推薦(すいせん)なさったの。
その感謝のお気持ちで盛大な祝賀会をしたいと思っておられたけれど、源氏の君は(みかど)のご計画もご辞退(じたい)なさったくらいだから、遠慮してかなり規模(きぼ)を小さくなさった。

「四十歳から先は長生きする人があまりいないと聞きますから、今回は(ひか)えめにしていただきまして、もし五十歳になることができましたら、そのときに今回の分もお祝いしてくださいませ」
と源氏の君はおっしゃっていたけれど、やはり中宮という特別なご身分の方が開かれる会だから、重々しい立派な会になる。

秋の御殿(ごてん)を会場にして、源氏の君に亡き父君(ちちぎみ)のお形見(かたみ)である宝物を差し上げなさる。
中宮様の亡き父君は、東宮(とうぐう)のまま若くしてお亡くなりになった方で、由緒(ゆいしょ)正しい宝物をたくさんお持ちだったの。
そういうものがいろいろなところから贈られて、ことごとく源氏の君が()()ぎなさる。
とてもすべては書ききれないほどで、上流階級の贈り物って別世界よね。