紫の上はまず女御様とご対面なさる。
女御様は実の母君である明石の君よりも、養母の紫の上の方に懐いて信頼なさっている。
美しく大人らしくなられたお姿を、紫の上は<あぁ、かわいらしい>と拝見なさる。
うちとけてしばらくお話しなさってから、いよいよ境の戸を開けて姫宮様のところへお上がりになる。
姫宮様はただひたすら幼くいらっしゃるので、紫の上はほっとなさった。
母親のように優しく話しかけて、宮様とご自分が従姉妹同士であることをお気づかせなさる。
それから宮様の乳母を呼んで、きちんとご挨拶なさった。
「恐れ多くもご親戚ということになりますけれど、これまでご挨拶の機会がなく失礼いたしました。これからは親しい者とお考えいただいて、私のおります離れにもぜひお越しくださいませ。至らぬ点がございましたら、遠慮なくお教えいただければうれしく存じます」
宮様はぼんやりとお聞きになっている。
少しのお返事も難しそうなので、乳母が申し上げる。
「母女御様はすでにお亡くなりで、父君であられる上皇様はご出家なさいましたから、本当にお心細い宮様なのでございます。そのようにご親切なことをおっしゃっていただき、ありがたいことと存じます。上皇様も、源氏の君に父親代わり、あなた様に母親代わりをしていただきたいとお思いのようでいらっしゃいました」
「上皇様からそのような恐れ多いお手紙を頂戴いたしましたから、私もできるかぎりお役に立ちたいと願っておりましたが、何をさせていただきますにも力不足でございまして」
落ち着いた大人らしい態度でお答えになってから、姫宮様にほほえんで、絵巻のことや雛遊びがいつまでもやめられなかったことなどをお話しになる。
まるで同世代の少女のような紫の上の口ぶりに、
<源氏の君がおっしゃったとおりの人だ。仲良くなれそうな気がする>
と、姫宮様は他愛もなくうちとけなさる。
女御様は実の母君である明石の君よりも、養母の紫の上の方に懐いて信頼なさっている。
美しく大人らしくなられたお姿を、紫の上は<あぁ、かわいらしい>と拝見なさる。
うちとけてしばらくお話しなさってから、いよいよ境の戸を開けて姫宮様のところへお上がりになる。
姫宮様はただひたすら幼くいらっしゃるので、紫の上はほっとなさった。
母親のように優しく話しかけて、宮様とご自分が従姉妹同士であることをお気づかせなさる。
それから宮様の乳母を呼んで、きちんとご挨拶なさった。
「恐れ多くもご親戚ということになりますけれど、これまでご挨拶の機会がなく失礼いたしました。これからは親しい者とお考えいただいて、私のおります離れにもぜひお越しくださいませ。至らぬ点がございましたら、遠慮なくお教えいただければうれしく存じます」
宮様はぼんやりとお聞きになっている。
少しのお返事も難しそうなので、乳母が申し上げる。
「母女御様はすでにお亡くなりで、父君であられる上皇様はご出家なさいましたから、本当にお心細い宮様なのでございます。そのようにご親切なことをおっしゃっていただき、ありがたいことと存じます。上皇様も、源氏の君に父親代わり、あなた様に母親代わりをしていただきたいとお思いのようでいらっしゃいました」
「上皇様からそのような恐れ多いお手紙を頂戴いたしましたから、私もできるかぎりお役に立ちたいと願っておりましたが、何をさせていただきますにも力不足でございまして」
落ち着いた大人らしい態度でお答えになってから、姫宮様にほほえんで、絵巻のことや雛遊びがいつまでもやめられなかったことなどをお話しになる。
まるで同世代の少女のような紫の上の口ぶりに、
<源氏の君がおっしゃったとおりの人だ。仲良くなれそうな気がする>
と、姫宮様は他愛もなくうちとけなさる。



