野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

東宮(とうぐう)様に入内(じゅだい)なさった明石(あかし)女御(にょうご)様は、(さと)()がりのお許しもいただけず、何かと気を()内裏(だいり)暮らしをつづけていらっしゃった。
夏ごろにご懐妊(かいにん)が分かったけれど、まだお若い方だから誰もかれもご心配申し上げている。
やっと東宮様から里下がりのお許しが出て、なんとか六条(ろくじょう)(いん)にお戻りになった。
春の御殿(ごてん)の一番大きな建物を東と西に分けて、西側に姫宮(ひめみや)様、東側に女御(にょうご)様がお暮らしになる。
母君(ははぎみ)明石(あかし)(きみ)が女御様に付き添っている。