姫宮様のご降嫁のあと、上皇様は山寺にお移りになった。
源氏の君のところに頻繁にお手紙が届く。
とくに姫宮様のことを何度もおっしゃって、
「私がどう思うかなど気になさらず、あなたのお好きなようにしていただいて構いませんから」
とあるけれど、宮様の幼さをご心配なさっていることは明らかなの。
紫の上の方にも特別にお手紙をお送りになる。
「幼い姫宮が何も分からないままそちらへ行っておりますが、悪意などない子ですからどうか許してご後見ください。あの宮の母はあなたの叔母にあたる人ですから、従姉妹同士の縁だと思ってください。仏教の修行の妨げになりそうなほど気がかりなのです。出家の身でいつまでも子どもの心配をするなどあってはならないことですが」
源氏の君もご覧になった。
「お気の毒なお手紙だ。かしこまってお返事をお書きなさい」
とおっしゃる。
紫の上は書きにくく思われたけれど、「謹んで承知いたしました」というお返事の後に、素直なお気持ちをお書きになった。
「大切な姫宮様でいらっしゃるのですから、無理にお忘れになることはないと存じます」
上皇様はそのご筆跡をご覧になって、
<何もかも完璧な女性のようだ。そんな人が幼い姫宮をどう見ているだろう>
と心苦しくお思いになる。
源氏の君のところに頻繁にお手紙が届く。
とくに姫宮様のことを何度もおっしゃって、
「私がどう思うかなど気になさらず、あなたのお好きなようにしていただいて構いませんから」
とあるけれど、宮様の幼さをご心配なさっていることは明らかなの。
紫の上の方にも特別にお手紙をお送りになる。
「幼い姫宮が何も分からないままそちらへ行っておりますが、悪意などない子ですからどうか許してご後見ください。あの宮の母はあなたの叔母にあたる人ですから、従姉妹同士の縁だと思ってください。仏教の修行の妨げになりそうなほど気がかりなのです。出家の身でいつまでも子どもの心配をするなどあってはならないことですが」
源氏の君もご覧になった。
「お気の毒なお手紙だ。かしこまってお返事をお書きなさい」
とおっしゃる。
紫の上は書きにくく思われたけれど、「謹んで承知いたしました」というお返事の後に、素直なお気持ちをお書きになった。
「大切な姫宮様でいらっしゃるのですから、無理にお忘れになることはないと存じます」
上皇様はそのご筆跡をご覧になって、
<何もかも完璧な女性のようだ。そんな人が幼い姫宮をどう見ているだろう>
と心苦しくお思いになる。



