そんなふうに思い悩んでいらっしゃったからかしら、源氏の君の夢に紫の上が現れなさった。
悪い予感がして、源氏の君は鶏の声を聞くやいなや紫の上の離れにお帰りになる。
まだ夜だから、本当はもう少しゆっくりなさるべきなのだけれど。
姫宮様はとにかく幼いご様子なので、乳母たちがすぐ近くにお仕えしている。
その乳母たちが出ていかれる源氏の君をお見送り申し上げる。
宮様は子どものように眠っておられてお気づきにならない。
夜明け間近の空は暗い。
ぼんやりとした雪の光のなかをお帰りになっていく。
あたりには源氏の君のすばらしい香りだけが残って、
「お姿は見えず香りだけ。春の夜の梅のようでいらっしゃる」
と乳母はつぶやいた。
お庭のところどころに雪が残っている。
源氏の君は離れの戸を叩かれたけれど、女房は出てこない。
少し懲らしめてさしあげようと寝たふりをしているのね。
しばらく渡り廊下にお待たせしてから、戸の鍵を開けてお部屋のなかにお入れした。
紫の上の布団を引き下げながらおっしゃる。
「待たされてすっかり冷えてしまった。あなたのお怒りを思うと血も凍るような気がします。悪いことなどしていないはずなのに」
涙で濡れたお袖をさっと隠して、紫の上はやさしく微笑まれる。
それでも少し距離をお取りになるご様子が見えて、高いご身分の女性らしい感じがするの。
<内親王様でもこれほどではいらっしゃらないのに>
先ほどまでご一緒だった姫宮様と思わずお比べになる。
悪い予感がして、源氏の君は鶏の声を聞くやいなや紫の上の離れにお帰りになる。
まだ夜だから、本当はもう少しゆっくりなさるべきなのだけれど。
姫宮様はとにかく幼いご様子なので、乳母たちがすぐ近くにお仕えしている。
その乳母たちが出ていかれる源氏の君をお見送り申し上げる。
宮様は子どものように眠っておられてお気づきにならない。
夜明け間近の空は暗い。
ぼんやりとした雪の光のなかをお帰りになっていく。
あたりには源氏の君のすばらしい香りだけが残って、
「お姿は見えず香りだけ。春の夜の梅のようでいらっしゃる」
と乳母はつぶやいた。
お庭のところどころに雪が残っている。
源氏の君は離れの戸を叩かれたけれど、女房は出てこない。
少し懲らしめてさしあげようと寝たふりをしているのね。
しばらく渡り廊下にお待たせしてから、戸の鍵を開けてお部屋のなかにお入れした。
紫の上の布団を引き下げながらおっしゃる。
「待たされてすっかり冷えてしまった。あなたのお怒りを思うと血も凍るような気がします。悪いことなどしていないはずなのに」
涙で濡れたお袖をさっと隠して、紫の上はやさしく微笑まれる。
それでも少し距離をお取りになるご様子が見えて、高いご身分の女性らしい感じがするの。
<内親王様でもこれほどではいらっしゃらないのに>
先ほどまでご一緒だった姫宮様と思わずお比べになる。



