野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

(むらさき)(うえ)はこれは仕方のないご結婚だと分かっていらっしゃる。
<突然空から()ってきたようなお話で、源氏(げんじ)(きみ)にとっては逃げようもないことだったのだから、(にく)たらしいことを申し上げてはいけない。私が文句を言えるような浮気(うわき)沙汰(ざた)とは違うのだ。どうしようもないことなのにくよくよと思い悩んでいたら、世間の(うわさ)になってしまう。父宮(ちちみや)のご正妻(せいさい)は私のことを理不尽(りふじん)にお(うら)みになっているらしいから、そんな噂が伝わったら『よい気味(きみ)だ』とお思いになるだろう>

普段はおっとりとした紫の上も、そのくらいのことは想像なさる。
<今さら私の立場が()らぐことはないと、調子に乗ってのんきにしていたことを世間は笑うだろう>
内心(ないしん)つらくお思いだけれど、表面上はおっとりとした態度を取りつづけていらっしゃる。